E-liott
26-05-13 02:12

The Only One2 vol.14

映画『SAKAMOTO DAYS』 福田雄一監督が明かすコメディーの流儀(後編)

八木勇征が出演する実写映画『SAKAMOTO DAYS』が全国公開中。本作の脚本・監督を手掛ける福田雄一のインタビュー後編は、福田組の持ち味である「コメディー」と八木が演じる神々廻に求めたものについて。人気マンガ原作だけに、キャスティングは非常に重要だが、主人公の目黒蓮を筆頭に、高橋文哉や北村匠海など人気キャストがそろった。撮影タイミングのみならず、キャスティングまでもが奇跡的にハマり、“神に愛された映画”になったと言う。

 『SAKAMOTO DAYS』はすべてのタイミングが運命的にハマった、神に愛された映画だと思っています。特にキャスティングに関しては、「こんなラッキーがあるんだ!?」という驚きの連続でした。それは、目黒(蓮)くんや(八木)勇征くんだけでなく、南雲役の(北村)匠海くんもそう。匠海に関しては、(高橋)文哉くんがたまたま匠海くんに「今、『SAKAMOTO DAYS』のアクション練習をしている」と話したとき、匠海くんが原作のファンだと分かったんだそうです。それを文哉くんが僕に教えてくれて、ダメ元でアプローチをしてみたら出演の承諾をいただけたんです。

 大佛役のめるる(生見愛瑠)は映画『モエカレはオレンジ色』(2022年)を見てオファーをしたのですが、その当時はスケジュールの都合で、一度お断りをされていたんです。でも、数日後にマネジャーさんから「スケジュールが空いた」という電話がかかってきて。しかも、マネジャーさんは、何も知らないはずのめるるから『SAKAMOTO DAYS』のマンガを薦められたそうなんです(笑)。撮影タイミングだけでなくキャスティングも含め、すべてのピースが奇跡的にうまくハマった作品となりました。

「笑いに関するエチケット」の大切さ
 僕がキャスティングをする際に大切にしているのは、「僕の作品を見てくれているかどうか」。なぜなら、僕の作品のテイストを理解していただいている方でないと出演するのは難しいような気がしているからです。僕が手掛ける作品はコメディータッチのものが多いので、そのイメージで来られる方も多いのですが、コメディー作品における大原則は真面目にやるということ。どこまで踏み込んで笑いをとっていいのかを感じ取ることができる、いわゆる「笑いに関するエチケット」を持っていることが大切だと思っています。

 それで言うと、勇征くんは作品に携わる前から、僕の作品の笑いを理解してくれていた。神々廻と大佛(生見)のやり取りはコメディーチックですが、カッコ良さは崩してほしくないなと思っていて。その空気感は現場で説明して分かるものではないので、そのさじ加減を理解してくださっているかどうかはかなり大きなポイントなんです。

 それに、実写化で原作を超えようとすると「そうきたか!」という驚きやギャップが必要。勇征くんの美しいビジュアルとカッコいい声は、かなりラブストーリー向きではありますが、神々廻を演じてもらうことで、そのイメージをいい意味で裏切りたいなと思っていました。さらに、僕ならこの人を“崩せる”という確信めいたものもありました。キャスティングさせていただく方の出演作はすべて拝見していますが、勇征くんはそうした監督の欲求をそそる芝居をする俳優さんなのだと感じました。

 マンガ原作とはいえ、俳優自らが生み出すものを信じているという福田組は、俳優が自由なアプローチで試すことのできる現場。本作でコメディーパートを任されているのは、眞霜平助を演じる実力派バイプレイヤー・戸塚純貴だ。八木はムロツヨシや佐藤二朗といった、福田組常連の俳優たちのコメディー演技に憧れがあると明かしているが、福田監督の考えるコメディーセンスのある俳優とは?

 「福田組に参加したい」と言ってくださる俳優さんは、みんな「ボケ役をやりたい」とおっしゃるんです。一見、すごく自由で楽しそうに見えますが、そのパートを担うのはかなりハードルの高いこと。そこに関しては、僕もかなり厳しく見ていて、ムロくんや二朗さんにも「もっと面白いものできますか?」と言って焦らせてしまうくらい(笑)。

 『SAKAMOTO DAYS』では、戸塚くんのコメディー芝居が光っていますが、みなさん勘の良い方ばかりでした。目黒くんも真面目に取り組んでくれていて、坂本が妻・葵(上戸彩)に「離婚」というワードを言われて驚くシーンでも、「もう少し目と口を開けられますか?」とリクエストすると「はい、頑張らせていただきます」と返ってくるんです(笑)。

 勇征くんの役作りや作品に向き合う姿を見ていても、すごく前向きな姿勢を感じました。それに、僕の作品に出演したいと言ってくださる俳優さんは「自由に動いてみたい」という思いを持っている方が多いような気もするし、きっと勇征くんもそういうタイプの方なのだと思います。

コメディーは「好き」か「嫌い」か
 コメディーをやるのにうまい下手はないと思っていて、それよりも好きか嫌いかだと思うんです。「人を笑わせたい」という気持ちがある方であれば、自然とそういう笑いの取り方になるはずだから。そして、僕が「こうしてください」とは言わない代わりに、俳優側から笑いの引き出しをどれだけ発信してもらえるのかが大切。

 役を生きる俳優さんが、役としてどう動けば面白くなるのかが大事なので、それが面白ければ正解なんだと思っています。だからこそ、今回の『SAKAMOTO DAYS』でも、俳優さんに委ねているシーンは多いです。

 八木が演じる神々廻は、主人公・坂本太郎の殺し屋時代の元同僚で、南雲(北村匠海)と大佛(生見愛瑠)とともに特務部隊「ORDER」に所属する殺し屋だ。神々廻は福田監督が最も好きなキャラクターでもあり、八木には優しさのなかに潜む“やさぐれ感”を求めたのだそう。

 僕が勇征くんに求めたのは、物腰柔らかな神々廻のなかにある“やさぐれ感”。京都弁で優しい雰囲気ではあるけれど、どこか彼の生い立ちを感じさせる雰囲気は醸し出してほしいなと思っていて。そのために、神々廻が移動をするときは必ず死体を踏んで歩く、という演出を入れてあります。勇征くんには、そんな残忍な男だけど優しい神々廻を表現してほしかったんです。

 でも、勇征くんがリハーサルでセリフを言ったとき、かなり優しく聞こえたんです。もともと勇征くんの声は甘いのでそう聞こえたのかもしれませんが、「隠しきれない輩っぽさは絶対に消さないで」とだけ伝えたんですよ。そうしたら「分かった気がします」と言ってくれて。本番に入った途端、セリフの話し方と表情が見るからに変わったんです。

 クイッと口角が上がる感じや瞳孔の開き具合が、まさに僕の理想とする神々廻そのものでした。「悪いけど、お前ら全員皆殺しや」というセリフのときの表情もかなり良かったので、神々廻の顔に寄っていくカットに予定を変更したくらい。1つのスイッチでここまで変わるんだ、と驚いた瞬間でした。

すべての俳優が輝く映画に
 実は、家でエンドロールの最終チェックをしていたとき、僕の妻がその映像を見て、「初号を見たい」と言い出したんです。妻がそう言ったのは、『SAKAMOTO DAYS』が初めてなんじゃないかな? そして見せたところ、「すべての俳優さんがこんなに輝いている映画はない」と言ってくれたんです。

 僕の妻は、神々廻と鹿島(塩野瑛久)がお気に入りだったみたいで、特に八木さんに関しては「これからすべての作品に出演してもらったほうがいい!」と言っていたくらい(笑)。撮影しているわけだから、当然僕は何度も『SAKAMOTO DAYS』を見ているけど、それでもまた見たくなってしまう不思議な作品だなと思っています。我ながら素晴らしい作品になったと自負していますので、ぜひ何度でも『SAKAMOTO DAYS』の世界を楽しんでください。

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发布于 陕西