生田絵梨花インタビュー 『リア王』「セリフだけで勝負する舞台に立つことは大きな挑戦」(前編)
DISCOVER WORLD THEATREシリーズの第15弾として、シアターコクーン前芸術監督・蜷川幸雄氏の生誕90年を迎えることを記念し、“NINAGAWA MEMORIAL”と題し、 『ハムレット』『マクベス』『オセロー』と並ぶシェイクスピア四大悲劇のひとつである『リア王』が上演。
上演台本・演出は、人間を深く見つめ物語を繊細に紡ぎ出す斬新な演出手法が高く評価されているフィリップ・ブリーン氏が務めます。
リア王を演じるのは、大竹しのぶさん。共演には宮沢りえさん、成田 凌さん、 生田絵梨花さん、鈴鹿央士さん、横田栄司さん、安藤玉恵さん、勝村政信さん、 山崎 一さんと、これ以上ない豪華なキャストが結集しました。
THEATER GIRLは、コーディリア役の生田絵梨花さんにインタビュー。前編では、初のストレートプレイに挑む思い、フィリップ・ブリーン氏の演出で楽しみにしていることや大竹しのぶさんや豪華共演者の方々との共演についてうかがいました。
初のストレートプレイとして『リア王』に挑戦できるのは光栄
――本作が初のストレートプレイへの出演となりますが、いつか挑戦したいと思っていたのでしょうか。
ストレートプレイはずっとやりたいと考えていました。この時期に、しかも錚々たる先輩方がいらっしゃる中で、初めてのストレートプレイとして『リア王』に挑戦できるのは、本当に光栄だと思っています。セリフだけで紡がれる舞台は初めてなので、怖さもありますが、とてもチャレンジングだと感じています。
――ストレートプレイの中でも、シェイクスピア作品という点はいかがでしょうか。
やはりシェイクスピアの作品は詩的で美しい一方、とても難解な部分もあります。台本を読んでも「これはどういう意味だろう」と考え込むことも多く、普段の何倍も時間をかけて読み進めています。このセリフを自分の心や体にどう落とし込んでいくかは、まだまだ未知の領域です。
――同じシェイクスピア作品でも、以前出演された『ロミオ&ジュリエット』とは違いますね。
そうですね。『ロミオ&ジュリエット』の時はミュージカルだったので、やはりストレートプレイのセリフだけで構成される世界とはまったく違う印象です。
今回のタッグに参加できるのは本当にうれしい
――今回、フィリップ・ブリーンさんの演出を受けるにあたり、楽しみにされている点はありますか?
以前、大竹しのぶさんとご一緒したMusical『GYPSY』という作品のとき、まだ『リア王』のお話はなかったのですが、しのぶさんがフィリップさんについてよく話していらっしゃったんです。すごく信頼していて、大好きな演出家だとおっしゃっていました。そのときから「いつかご一緒してみたい」と漠然と思っていたので、今回そのタッグに参加できるのは本当にうれしいです。
――本作では、大竹しのぶさんがリア王を演じられることも話題になっていますが、改めて、共演への思いをお聞かせください。
しのぶさんは舞台に立つと、まるで憑依しているかのように見えるのですが、ステージ裏に戻るととても冷静な目を持っていらっしゃるんです。『GYPSY』でご一緒したときも、「ここはこうなのでは」といった話し合いをたくさんさせていただきました。
『リア王』は難解な部分が多く、自分も悩むことが多いと思いますが、今回もいろいろお話ししながら一緒に作品を作っていけたらと思っています。特にリア王とコーディリアの関係性は物語の中でもとても重要な部分なので、丁寧に対話を重ねながら築いていきたいです。
――本作では、主演の大竹しのぶさん以外にも、宮沢りえさんや成田 凌さんなど、多彩なキャストが揃っていますが、共演にあたり楽しみにしていることはありますか?
今はまだ作品を通して皆さんを拝見してきた立場なので、緊張の方が大きいです。ただ、(宮沢)りえさんとはポスター撮影で少しお会いしたり、舞台『昭和から騒ぎ』を拝見した際にご挨拶させていただいたことがあるのですが(取材時)、とても柔らかい雰囲気で優しくお話ししてくださったのが印象に残っています。
――共演を通じて学びたいこと、期待していることはありますか?
すべてが勉強になると思っています。舞台上での演じる姿を見つめるだけでも学びになると思いますし、普段どんなことを考え、どのように興味を持って生きていらっしゃるのかということも伺ってみたいです。
映像の現場ではなかなか長い時間お話をすることは難しいですが、舞台は稽古も本番も時間を共有できるので、その環境を大切にしながらできるだけ多くお話を聞かせていただきたいです。
――ご自身としては、この作品でどのように成長したいと考えていますか?
まずは歌がない舞台に挑戦すること自体が初めてなので、そこが大きな課題です。ミュージカルでは音楽に導かれ、お客様の心もメロディーに乗って動いていく感覚がありますが、今回はそれがありません。立ち姿や言葉そのものによって、お客様と心をつなげ、舞台上の人物同士で心を交わす必要があるので、それが一番の試練だと感じています。
――その試練に向き合うお気持ちは?
今は不安と楽しみが半分ずつです。ですが、挑戦を重ねていくうちに少しずつ楽しみに変えていけたらと思っています。
もどかしさがある一方で、人間の心理を的確に突いている
――『リア王』という作品を読んで、まずどんなことを感じましたか?
他のシェイクスピア作品にも共通しますが、「誤解によってすれ違いが生まれてしまう」という構造がとても印象的でした。あと一歩で運命が変わったかもしれないのに、言葉や伝え方ひとつで悲劇に向かってしまう。そのもどかしさがある一方で、人間の心理を的確に突いているとも思います。
現代では情報が溢れていて、いろんな価値観を調べたり選んだりすることができますが、この時代にはそれがない。ほんのわずかな言い回しや、誰かを介した伝言で大きな歪みが生まれてしまう。その姿は、人間の愚かさや弱さを鮮明に表していると感じました。演じる自分自身も、きっと丸裸にされていくんだろうなという覚悟があります。
――今の時点で、台本を読んで気づいたご自身の新たな一面はありますか?
現代でもメディアなどの情報などを鵜呑みにしてしまい、先入観だけで物事を判断してしまうことがあると思います。でも本当のことは当事者しかわからないし、自分の目で見て耳で聞かないと理解できない部分も多い。そうしたテーマは今の時代にも通じる問題だと思います。
――ご自身にとって、コーディリアはどんなキャラクターだと捉えていますか?
とても誠実で、愛に対してまっすぐな人だと思います。調子のいいことを言えても行動が伴わないずるい生き方もある中で、彼女は自分の信念に従って行動で示す。そこがとても実直で誠実だと感じます。
――『リア王』の登場人物の中で、ご自身が共感できる部分はありますか?
今はコーディリアを中心に読み進めていますが(取材時)、私自身、日々「言葉にすることの難しさ」を強く感じているんです。作中でリア王が娘たちに「自分への愛を言葉で述べよ」と迫り、それによって土地や褒美を与える場面があります。
姉たちは巧みに言葉を並べますが、コーディリアは「何も言わない」。それは愛がないからではなく、嘘をつきたくない、本当に大切に考えているからこそ言葉にできない、という不器用さがあるのだと思います。その姿に共感しますし、自分も「もっと上手に話せたら」と思うことがあるので、そうした感覚を重ねながら演じられたらと思っています。
